いわゆる”しゃべり言葉”なので、本当に香港に住んで
この土地の文化や習慣に触れていないと、習得は難しいと思います。
それが地方方言の良いところなのですが、メディアの発達や社会の変化とともに、
そういった方言の特徴が次第に薄れていくのは避けられないことのようです。
今の香港の広東語は昔に比べかなり”洗練”(?)されてきて
、”柄の悪さ”(失礼!)が特徴の広東語らしい表現が薄れてきたような気がします。
私が広東語のお手本としてあがめている師匠は、かの「Mr.Boo」こと、
マイケル・ホイ先生ですが、彼の描く香港人、彼が話す広東語こそ、
正統なる香港人のそれであると信じて疑いません。
彼の作品は70年代、80年代が黄金期ですが、その中でも傑作中の傑作
「半斤八両(邦題Mr.boo!)」と「賣身契(邦題Mr.Boo!インベーダー作戦)」
であります。
彼の弟で当時香港ポップス界のスーパーアイドル、サミュエル・ホイが歌った
カバー曲「半斤八両」の歌詞は広東ポップスの最高傑作に位置づけられています。
(はい、私が勝手に位置づけています(>_<;))
この歌詞は広東語を学習する者の必須課目であり、その中身の濃さに感慨ひとしおです。
で、ちょっとここでこの歌詞をご披露させていただきたいと思います。
我地呢班打工仔 おれたちしがないサラリーマン
通街走羅直頭系壞腸胃 もう働きすぎでクタクタだ
搵個些少到月底點夠駛(歪過鬼) 稼ぎは少なく月末までもたない(雀の涙)
確係認真濕滯 ホントにいやになる
最弊波士郁嘀發威(顛過雞) 最悪なことに上司はいつもいばりちらして(サカリのトリよりひどい)
一味系處系唔系亂0黎吠 何かにつけて吠えまくる
0翳親加薪塊面0拿起惡睇(扭嚇計) 昇給要求すればしかめっ面(こっちだって)
你就認真開胃 お前はホントにいい気なもんだなって
(半斤八兩)做了只績0甘0既樣 (世間はそんなもんさ)とにかくまじめに働いても
(半斤八兩) 濕水炮仗點會響 (世間はそんなもんさ)不満があってもじっと耐え
(半斤八兩)夠疆呀楂槍走去搶 (世間はそんなもんさ)強盗する勇気もなし
出0左半斤力 想話羅番足八兩 それなりの見返りを期待しても
家陣惡搵食 世の中景気が悪いんだよ
邊有半斤八兩0甘理想(吹漲) そううまくはいかないんだよ(まったく!)
あえて直訳ではなく、その歌詞の裏に秘められた本当の意味を
あらわすように訳をしました。
いくつか詳細を書いていきたいと思います。
打工仔(ダーゴンジャイ) これは今でもよく使います。勤め人の意。
香港人は能力のあるヤツは独立して自分で商売するもんだと思っているので
勤め人=能力ないヤツ的な図式があります。
この”打工仔”を使う時は特にこの意味あいが濃く、
人に使われている立場の人間であることを卑下した言葉です。
半斤八兩(ブンガンバッリョン)五分五分、同等という意味
1斤は16両なので、半斤は8両です。
この映画と歌詞になぜこの半斤八兩という言葉を使っているのかというと
この歌詞の部分でわかります。
出0左半斤力 想話羅番足八兩 半斤の力を出して、八両もらおうっていうのか
邊有半斤八兩0甘理想 どこにそんな同等の世界があるんだよ
なるほど、いつの時代も同じですね。
世の中に認められるには、給料以上の仕事をする必要がある、ということか・・・うーん、テツガク的。
吹漲(チョイジョン) 頭に来る、腹が立つの意味。
同様の意味で通常会話で使われる”激死!(ゲッッセイ)”というのがありますが、
この吹漲の方が程度がシリアスなカンジです。
ちょっと長くなりましたが、今日はここまで。この後も続けていきたいと思います。
では最後にyoutubeのリンクを貼りつけておきますので、阿Sam(サミュエル・ホイ)の歌をお楽しみください!
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